「STORMWORKS」シリーズ第2弾は、有名な「ESCAPE from PLATO'S CAVE」や24分にも及ぶ、
「AHAB!」など魅力的な作品集となっています。指揮は勿論メリロ自身で、演奏を担当しているのは
ライプツィッヒ放送吹奏楽団とライプツィッヒ・サキソフォン・カルテットです。
サキソフォンをメインにした作品が収録されている為、この吹奏楽団へさらにこのカルテットを
追加しての編成となりました。ヨーロッパを代表する吹奏楽団の演奏は
とても素晴らしいものと言えるでしょう。

 

MILLENNIA Op.837 in 1997
 オープニングを飾るのは冒頭からスピード感あふれる「ミレニア」。第1楽章の「Art of the State」は終始休む暇もないアクションスコアです。本当に映画音楽の一節を聞いているかのような曲です。特に金管楽器の活躍が素晴らしいもので、他の楽器の出る幕がないといった感じ。第2楽章の「By Love Inviolate」は全く逆の楽章と言って良いほど落ち着いた雰囲気の曲です。フルートのソロから始まり、オーボエへとつながり、それはホルンの優しいソロへ繋がっていきます。伴奏を担当するハープもとても魅力的。一時を置いて登場するオーボエとサキソフォンのソロの対比もいい味出してます。この楽章の聞き所はやはり、木管楽器中心の心癒されるテーマでしょう。クライマックスは、壮大と思わせておいて、再び木管楽器による静寂のテーマによって消えるように終わります。約10分の曲です。

 

The First & The Last Op.770 in 1995
 「最初と最後」と名の付けられた第3楽章編成の音楽です。第1楽章「In the Labyrinth of the Lion」は「ミレニア」同様、スピード感あふれる楽章になっています。しかし違うところは、テーマを歌う楽器が金管楽器から木管楽器に変わったということです。「ミレニア」に比べると若干迫力は落ちますが、カッコよさはこちらも負けていません。第2楽章「In the Hollow of the Heart」は落ち着いた楽章です。またもや木管楽器の優しいテーマが現れます。トランペットのソロも優雅で、心に残るメロディです。第3楽章「In the Battle at Meggido」は、「Winds & Percussion in Motion」に収録されている「WAY OF THE WARRIOR」の第3楽章「In the Arena at Meggido」と同じ楽曲ですが、やはり原曲の方が迫力は違います。トロンボーンの痛烈な旋律はこちらの方が輝いています。約12分の曲です。

 

"I"of the STORM Op.755 in 1994
 この曲は第3楽章編成で各楽章で一つの楽器がピックアップされています。第1楽章の「"I"of the STORM」ではアルト・サキソフォンのソロが展開していきます。第2楽章「No One Knows」では、クラリネットのソロが美しく登場していきます。第3楽章「Epilogue:"I"of the STORM」では、テノール・サキソフォンがフィーチャリングされています。テナー・サキソフォンにより、第1楽章のテーマが再び現されるのです。第1楽章と第3楽章のサキソフォン担当は「ライプツィッヒ・サキソフォン・カルテット」。第2楽章のクラリネットは「ライプツィッヒ放送吹奏楽団」の首席奏者が担当しています。約9分20秒の曲です。

 

AHAB! Op.621 in 1992
 アメリカの作家ハーマン・メルヴィルの海洋小説「白鯨」に登場する、命を投げうって幻の白鯨モビー・ディックを追い凄惨な戦いを展開する海の男エイハブ船長を描いた作品です。吹奏楽作曲家である「フランシス・マクベス」もこの小説を題材にして「水夫と鯨」という作品を作曲しています。さて、吹奏楽でもナレーションが加わる曲はよくありますが、この曲ではナレーターではなく俳優の「カートウッド・スミス」(【ロボコップ 1987年米】でマーフィ警部を殺し、ロボコップに戦いを挑んだ人)が担当しています。彼の役割はCDの録音だけではわかりにくいかも知れませんが、聞く人の心をつかむ演出となっています。メリロの音楽はそのナレーションに上手くあわせた幻想的な音楽となっています。(少しだけ、Danny Elfmanの作曲したバットマンのテーマに似ているフレーズが登場します。)途中に出てくる効果音群もすごく良いです。映画を見るのではなく、聞いている感じのする曲であると思いました。約24分の曲です。

 

Escape from PLATO'S Cave Op.699 in 1993
 「プラトンの洞窟からの脱出」は、プラトンが書いたギリシャ哲学の古典『国家』の中に出てくる善のイデア論に関する「洞窟の比喩」を題材にした曲です。第3楽章編成で構成されています。第1楽章は「光」の届かない洞窟の奥深くを表現している曲です。メリロの作り出す迫り来る恐怖を味わえることでしょう。第2楽章は外の民が洞窟の民へと「光」の存在を教えるという楽章です。初めは息苦しい真っ暗な洞窟の感じしかしませんが、やがて光が差し込んでくるような雰囲気になります。第3楽章は、洞窟の民が「光」を求めて外に出ようとする脱出の音楽です。いつもとは違うメリロの音楽だと思います。最近ではこの曲も日本の吹奏楽コンクールで演奏されるようになりましたね。さすがにカット版でしょうけど・・・。約16分の曲です。