「STORMWORKS CHAPTER 0」は2003年にリリースされたメリロの7枚目のアルバムです。
このアルバムについてメリロは「私の今までの最高傑作である」と語っています。
その言葉のとおり大変素晴らしい音楽が詰まっています。演奏はメリロ自身の指揮による、
オランダ陸軍軍楽隊で収録されました。オランダ陸軍軍楽隊の見事なアンサンブルが楽しめる1枚でしょう。

In a Cause Called "Glorious" Op.885 in 2000
 オープニングを飾るこの曲は、トランペットのファンファーレっぽい旋律から始まります。
その後、木管楽器と金管楽器による主題が現れる。すると場面は変わり曲はテンポをあげて進んでいきます。やがてこの主題が何度も繰り返され、ホルンによる最初のトランペットの主題が奏でられ、そしてまた主題に戻ります。中間部では打楽器群によるリズムが提示され、様々なアンサンブルが繰り広げられます。コーダに入ると、ホルンが美しく奏で、トロンボーン&ユーフォニウムによる冒頭の主題が演奏され、ティンパニとバスドラムの連打によって曲は締めくくられます。まるで映画音楽を聴いてるかのような迫力がこの曲にはあります。難易度的にかなり難しいでしょう。約5分25秒の曲です。

 

In a Service Beyond Self Op.886 in 2000
 アメリカ空軍に捧げられたこの曲は、スネアの静かなソロから始まります。やがてそのリズムに金管群がメロディを奏でていきます。この曲の初めの方は、すごく静かな雰囲気に包まれています。途中、「In a Cause Called "Glorious"」にも登場した旋律が出てきます。しかしそれは派手ではなく、ものすごく優しくです。曲は一転し、ティンパニと低音により曲はテンポアップしていきます。
クライマックスは、打楽器ソロの後始まり、ホルンの高音が聞かれた後、幕を閉じます。約6分の曲です。

 

Him Op.896 in 2001
 以前「STORMJOURNEYS」にも収録された、「Musical Haiku」の第19番目の作品がこの曲です。このシリーズの曲は、全体的に静かな曲調で今までのメリロのド派手な音楽を聴いてきた人にとっては、少々物足りないかもしれませんが、いざ聞いてみると、メロディが大変素晴らしいのです。メリロは優しいテーマも得意とする人なので、このシリーズも最高傑作の中に余裕で入るでしょう。曲は木管楽器重視ですすめられます。この曲は優しいメリロのメロディがふんだんに使われた、癒し系の曲です。約4分30秒の曲です。

 

Voice for Bassoon & Percussion Op.891 in 2001
 メリロの書いたバスーン(ファゴット)協奏曲とも言うべき曲がこれです。この曲は、バスーンと打楽器のみの編成で書かれています。というわけでこの楽器以外は登場しません。バスーンは、ドリアン・クーケ(女性)が担当しています。とにかくこの人の演奏は素晴らしいです。メリロが難しく書いたメロディを余裕で吹きこなします。この曲は相当上手なバスーン奏者がいないと演奏できないかもしれません。途中、バスーンによるある主題が聞かれます。この主題は次の曲に登場します。ですからこの曲と次の曲には同じ旋律が出てくるということです。約7分の曲です。

 

KOLDOON Op.890 in 2000
 タイトルになってる「KOLDOON(コルドゥーン)」というのは、ロシアの指揮者の名前らしいです。その指揮者に捧げられた曲です。でも曲調はさほどロシアっぽくないですが・・・。曲の始まりは暗闇の中で鳴っている様な感じを引き起こすチャイムから始まります。後にテンポアップし、シンセサイザーによるコーラスの上にホルンが鳴り響きます。そして先ほどのバスーンの曲に出てきた旋律が同じリズム上に登場します。この部分はマーチ風です。また暗闇の雰囲気になり、冒頭の旋律が再現され、コーラスが奏でたメロディを木管楽器が奏で、またもやその上にホルンが乗っかります。最後はテンポ上げて突っ走っていきます。約5分20秒の曲です。この曲は私のお気に入りです。

 

FINEST HOUR Op.893 in 2001
 さて、楽しい曲が始まります。「素晴らしい時間」と言う名のこの曲は、パイプオルガンの静かな音色から始まります。2分間ほど静かな序奏が歌われ、急にスネアのロールとトランペットのファンファーレが聞こえてきます。次に聞かれます旋律は「Ship's Song」という曲をメリロがアレンジした物です。木管から金管楽器へと受け継がれていきます。途中、聞き覚えのある一節が流れてきますが、これはChapter1に収録された「ERICH!」の第1楽章のフレーズです。それが繰り返されたあと、なんと「American Knights」のテーマが始まります。このテーマが低音によって演奏されている間、木管楽器による「KOLDOON」の旋律が吹かれます。そうこうしているうちに、最初のテーマの再現部が登場し、派手に曲は終えられるのです。小品にして色々なメロディが詰め込まれた素晴らしい音楽です。約6分の曲です。

 

Once More Unto the Breach Op.888 in 2000
 「あの雄姿をもう一度!」というタイトルが付けられたこの作品は、3楽章で構成されています。特にこの曲で気にするべきところは、ソプラノ・サキソフォンをフィーチャリングしているところでしょうか。全楽章通してこの楽器が活躍します。第1楽章は、不協和音を使っている楽章です。静かに始まったかと思うと、急にダークな金管楽器のフレーズが飛び込んできます。それを繰り返しているうちにソプラノ・サキソフォンのソロが登場します。かなりのテクニックを要すると思います。そして再びダークな表現がされた後、休む暇もなく第1楽章は終わります。第2楽章は正反対の楽章で、メロディもどこか少し悲しげで、その悲しい中にも美しさがあります。そのメロディをまたソプラノ・サキソフォンが奏でていきます。第3楽章はいきなり「American Kights」のテーマから始まります。このテーマもまた先ほどの「Finest Hour」で使われたパターンと同じです。まったく同じ展開なんですが、その上に木管楽器の速い新しいメロディが聞かれます。それが終わると再び第1楽章及び第2楽章のテーマが再現され、そこへソプラノ・サキソフォンも乗っかり、ラストに突っ走っていきます。この曲と「Finest Hour」にはそれぞれ「American Knights」のテーマが使われていますが、この2曲は一連の「American Kights」シリーズではないそうです。約12分の曲です。

 

The Universe Below Op.897 in 2001
 「宇宙の下に」と名づけられたこの作品は、タイトル通り宇宙的な、神秘的な・・・、といった感じのする曲となっています。冒頭は穏やかでいかにもこれから何かが起こる、という風な雰囲気を漂わせています。盛り上がりを見せるのは中盤に入ってから。打楽器のリズムに金管楽器が乗ってきます。ホルンも勇ましく旋律を歌い上げます。それがしばらく続いた後、木管による神秘的テーマが提示されます。そこへホルンも加わり、このテーマを歌い上げていきます。再びこの沈黙を破るかのように打楽器と金管楽器のリズムが入り、クライマックスへと向かいます。約7分30秒の曲です。

 

a WALK on the WATER Op.896 in 2001
 冒頭からエリーネ・ハーバース(メゾ-ソプラノ)の歌声が聞こえてきます。そのソロの後にハープと鍵盤楽器が伴奏をつとめ、オーボエとバスーンが歌声と一緒にメロディを奏で、少しずつ楽器も増していきます。それが繰り返された後、ティンパニのロールが入り、金管楽器による主題が提示されます。ここからテンポは上がります。その後、ハイハットシンバルと各種打楽器群の伴奏の上に様々な楽器が乗ってきます。それが終わると再び先ほどの金管楽器の主題が再現され、また歌声が聞こえてきます。すると冒頭のメゾ・ソプラノの主題とホルンによる対比が始まります。引き続きそれの応用が様々な楽器によって演奏され、コーダへと向かいます。コーダは冒頭の主題の応用がさらに華麗に表現されています。やがてテンポを上げ、ティンパニのロールが入り、曲は全合奏による1撃により幕を閉じます。このアルバムのタイトルとなっていますこの曲は、まさしく「水上の歩行」というイメージを上手く表現した作品になっています。約11分の大曲です。

 

After the STORM Op.875 in 1999
 この作品は1976年に作曲され、1999年に合唱付として新たに生まれ変わりました。全編通して、コーラス部隊が主題を演奏します。メリロ自身が作詞した歌詞をコーラスが歌い上げ、完全に他の楽器は伴奏にまわります。途中、Chapter1に登場した「STORMWORKS」の第3楽章の旋律も聞こえてきます。ラストを飾るにふさわしい大変素晴らしい曲となっています。約7分の曲です。