セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)は1905年、15歳のときペテルブルグ音楽院に入学、
在学中から天才的な鋭鋒を認められていました。
1909年に卒業資格を得ていったん学校を出て、新進ピアニストとして注目されていましたが、
作曲の勉強を続ける為に再び音楽院へ戻り、1914年に卒業しました。
卒業後、イギリスに戻った彼は、バレエ・ルッスの主宰者ディアギレフやストラヴィンスキー
にもその才能を認められました。
彼が初期に手がけた作品には、スキタイ組曲「アラとロリー」、ヴァイオリン協奏曲第1番、
バレエ組曲「道化師」などがありました。
プロコフィエフは一流ピアニストでもあり偉大なる作曲者という二面性の顔を持っていたのです。


1.交響曲第5番変ロ長調作品100

Symphony No.5 in B flat major, op.100

プロコフィエフが書いた7つの交響曲のうち最も有名で人気のある交響曲第5番。
私はこの作品をとある映像番組で知りました。この曲が流れ始めた瞬間、この曲の虜になって
しまいました。今まで数多くの交響曲を聞いてきましたが、プロコフィエフの交響曲を聞いたのは
これが初めてです。
何よりも新鮮だった第5番は、第2次大戦中の1944年に書かれました。翌年に行われた初演演奏会は
大成功に終わりました。
この交響曲は祖国の存亡をかけた戦争時代の劇的緊張を随所に称えているものの、例えば
ショスタコーヴィッチ作曲のレニングラード攻防戦を描いた交響曲第7番とは全く違う異質の
作品で、プロコフィエフ自身の語るところによれば、この曲は、
自由で幸福な人間、彼らの力強い才能と、純粋で気高い精神に対する賛歌
として書き上げられたものです。
曲構成は4楽章編成。彼の特質である民族的抒情性が強く現れた最高傑作です。

 

演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
 第5番を知るきっかけになった映像を見た次の日に早速購入してきた1枚。私はカラヤン毛嫌いなんですが、ショップに行ったところ、めぼしい演奏はなく、このカラヤン版が置いてあったので、「カラヤンなら入門編には良いかもしれない」と思って購入した次第です。カラヤン・サウンドは幾分飽きていたんですが、久々にこの曲で思い出し、「ベルリン・フィルの音だ」と実感したんですけど、個人的にこの演奏、カラヤン・サウンドなんだけど許せました。ベルリン・フィルの弦楽器の音は結構好きなんで、力強い弦楽器と燃えるような管打楽器が登場する第4楽章で鳥肌が立ってしまったほどでしたから。カラヤン、上手い!の一言でしたね。1968年の録音なんですが、古さを全く感じさせないクリアな音で第5番の隅から隅までの音を明確に拾い上げていた素晴らしい音質でした。第4楽章は特にカラヤン・サウンドバリバリの熱い燃えるような演奏でした。

 

演奏:シカゴ交響楽団 指揮:ジェイムズ・レヴァイン
 私が大好きな指揮者とその楽団での第5番。レヴァインとシカゴ響のコンビを知ったのはラジオで流れていたドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」でした。初めて聞いた新感覚の新世界は凄すぎて当時、中学生だった私は凄く感激して翌日お小遣いでこのCDを買ってきたものでした。その後からこのコンビのファンになり、ホルストの組曲「惑星」を買って、シカゴ響の素晴らしいアンサンブルに感動し、これほどまでに鳴り続けるブラス軍に鳥肌を立てていました。そして久々に買ってみたこのコンビのプロコフィエフ。当たりも当たり!この交響曲でも彼らはやってくれました。爆裂する金管楽器。テンポを速めているのにもかかわらず一切ずれない弦楽器のパッセージ。第2楽章の軽快さ。第4楽章の爆裂サウンド!本当にプロコフィエフなのか?と思ってしまったほどでした。とにかくテンポが速い。そして上手い!なんともパーフェクトな演奏なんでしょう、このコンビが作り出す作品は!この演奏は名盤と呼ばれる↑のカラヤン版には勝てません!

 

演奏:NHK交響楽団 指揮:岩村 力
サンプル音源:第5番の終楽章より DL(1:25秒)
 2003年9月のNHK交響楽団定期演奏会のBプログラムで華麗にデビューを飾った、NHK交響楽団のアシスタント・コンダクター、岩村力のプロコフィエフ。私がこの曲を知るきっかけとなった映像、そうそれがこの岩村力のN響デビューコンサートの映像だったわけです。ある知り合いにこの指揮者の事を聞かせれどんな指揮者なのか調べてみたところ、N響のアシスタント・コンダクターだったわけで、それだけでもびっくり。(この人、オーケストラもさることながら、吹奏楽団も数多く振ってらっしゃるマルチ・プレイヤーなのです)その彼のデビューコンサートで演奏されたのがこのプロコフィエフの第5番だったのです。初めて聞く音楽をこうして映像で知ったということは自分としては久しぶりなことで(吹奏楽は別だけど・・)、たいがいコンサートで聞くと分かっている曲目については事前に予習していく習慣があるので、この映像での体験は珍しい事だったわけです。そして演奏のほうですが、やっぱり初なので衝撃度は120%。特に第1楽章の壮大さ、終楽章の岩村力によるオーケストラコントロールの上手さ、それが決め手となって私はこの曲にはまったのです。指揮棒を使わない指揮法で良くぞここまで纏め上げましたっていう感じの感動的演奏。今後、彼がNHK交響楽団に登場してどんな料理をしてくれるシェフになってくれるか期待が高まりました。