スティーヴ・ジャブロンスキー
 1970年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で作曲を学ぶ。94年、メディア・ヴェンチャーズ(現在のリモート・コントロール)にて「ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ」の下で2年間アシスタントを務める。その後、「パール・ハーバー」、「ハンニバル」等の追加音楽を担当する。そして2004年公開のジャパニメーション「スチームボーイ」で単独デビューを果たした。(私は彼に大注目しています。)

私が自信を持ってお勧めする作品の数々です。評価は「★」の数が多いほど高いです。5つが最高。

スチームボーイ(2004) ★★★★★
演奏:アメリカ全土のプロ・オーケストラ選抜メンバー
  「AKIRA」や「MEMORIES」などを生み出してきた鬼才「大友克洋」の最新作がこの「スチームボーイ」である。構想約10年、総製作費25億円、原画枚数約18万枚という大規模な映画となった。そして音楽は従来のサイバーチックなモノではなく、フル・オーケストラを使用したクラシック的なモノとなった。作曲を担当したのは「スティーヴ・ジャブロンスキー」。追加音楽ばかりやってきた彼にとってこれは完全な単独作曲。誰の手も借りず一人で書き上げた。その出来といえば、凄い事になっている。以前大ブレイクした「クラウス・バデルト」の単独デビュー作「タイム・マシン」を遥かに越えたと私は感じている。デビュー時からこの出来で良いものなのか。オープニングが流れた瞬間、ジャブロンスキーの凄さに鳥肌が立った。一度聴いただけで心に残るメロディをはじめ、アクションシーンで流れる煌びやかな音楽もまるで新人とは思えない完成度の高い作品だ。将来、ジャブロンスキーは師匠のジマーを越えるかもしれないと思った。いや、越えるだろう。それだけの凄さをこの「スチームボーイ」という作品で見せてくれた。サウンドトラックを聴いただけではこれがアニメーションの音楽だなんて誰も思わないだろう。もちろん映像も見たが、見事に映像をマッチして、より興奮させてくれる。とにかくその場面場面の音楽作りが非常に素晴らしい。いたるところにRC的サウンドが聞こえてくるのだが、ジャブロンスキー独特の音のほうがその上をいっているので、RC的サウンドはただの飾りにしかない。マジでやばいです!これからの作品に物凄く期待!ちなみに演奏はアメリカ中のプロ・オーケストラから集められた選抜メンバー達ということなので、めちゃめちゃ上手いです。録音も最高です。ついに日本映画もハリウッド音楽家とのコラボレートが始まった。

 初回限定生産盤はフォグ・ケース使用で音響監督の百瀬慶一さんとジャブロンスキーのインタビューが載ったブックレット付で、特に百瀬さんの「ジャブロンスキーとスチームボーイの音楽」という日記形式の解説書はすごく内容が濃く、音楽に携わっている人にとっては大変貴重な資料となっている。私も読んだが非常に勉強になった。このレビューで少しでも興味を持たれた方は是非、この初回版購入を勧める。

初回限定生産盤の写真(自分で撮影)

 

フォグ・ケースとその中身のピクチャーディスクとブックレットの写真

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アイランド(2005) ★★★
演奏:プリンシパル・オーケストラ+デジロック隊
 「アイランド」は「アルマゲドン」や「バッドボーイズ」、「パールハーバー」などを撮ったマイケル・ベイ監督の最新作。自分と同じクローンを殺す羽目になるというお話。出演は「新スター・ウォーズ・シリーズ」のユアン・マクレガーなど。

 「ジャブロンスキー注目のスコア!」と思ったんですが・・・、「スチームボーイ」の時のような素晴らしいシンフォニック・スコアはこの「アイランド」では聞かれません・・。サウンド的にはジマー組のトレヴァー・ラビン(アルマゲドンやナショナル・トレジャーの音楽を担当)が得意とする電子音楽系となっています。解説書には契約音楽家たちの記載がありますが、人数を見ても大して多くないので、その点から考えてもダイナミックなスコアは期待できない・・・。決まったテーマ曲が登場しないのも非常にイタイところ。映画自体はアクションのオンパレードというのを聞いていたので、スコアのほうもすんごいスコアが聞けると思っていたけど、「スチームボーイ」のような鳥肌立つようなスコアは全くない。

 「スチームボーイ」で私みたいにスティーヴのファンになった方は絶対このアルバムを買うかと思うが、この作品はファンの中で賛否両論が出そうですが、私はどちらかというと残念で仕方がない・・・。この作品には彼の本当の魅力が見えてこないからで・・・。

「スチームボーイ」が最高だっただけに・・・。 次回に期待しよう!