管理人がラヴェル作曲のボレロと同様に様々な演奏家のディスクを買い集めているホルストの組曲「惑星」を 聞き比べ感覚でご紹介しようというコンテンツのページです。
まだまだ買い揃えていない音源はありますが、国内版・海外版・ライヴ版とあるだけ紹介していきますんで、 見ていただければ幸いです。

 

組曲「惑星」作品32の作曲と初演までの経緯
 グスターヴ・ホルストは1874年生まれのスウェーデンとバルトの血が混じる家系に生まれた。
多彩な才能の持ち主だった彼は生涯に、ピアニスト、トロンボーン奏者、合唱指揮者、音楽教師、民族音楽研究家に加え、サンスクリット語にも精通していた。そしてかれこれ点星術にも興味を持ち、その興味が1914年に爆発した(笑)。
その1914年に組曲「惑星」作品32の第1曲目である火星の作曲に取り掛かっている。
火星は点星術では戦争の神マルスと呼ばれていた。その由来は火星が地球に近づく年は何かと戦争の絶えない年であったからだという。
そういう意味で火星は戦争をもたらすもの、もしくは戦争の神と呼ばれるようになった。
実際ホルストは火星を書くとき戦争というもの自体をよく知らなかった。
しかし出来上がった火星を聞いてみると戦争の如く恐ろしい音楽である。
大砲の存在すら知らなかった彼がこのような恐ろしい音楽を書けた事は不思議でならない。
ラヴェルのボレロ同様、同じリズムが繰り返される火星は戦争の恐ろしさを伝えるばかりではなく、
聞く人々に情熱と活力を与えた。
 ホルストが考えていた惑星の曲数は全7曲。当時冥王星は発見されておらず、そしてわが地球も含
まれてはいない。
冥王星が発見されたのは1930年ごろだと言うから、ホルストがこの世を去るわずか4年前である。
当の本人は発見されたとはいえ冥王星を組曲の中に付け加える事を嫌い、今でもホルストの惑星は全7曲のままである。
 しかし2000年にイギリスの作曲家でありホルスト研究家のコリン・マシューズがこの組曲に冥王星を加えたニュー・バージョンを出版した。その出版後、イギリス国内の演奏会ではこの新版が数多く演奏されて話題を呼んだ。
しかし賛否両論で冥王星だけはホルストの作曲ではない為、それを嫌う人も数多くいる。マシューズ自身は最後の海王星に続くような感じで冥王星を繋げ合わせたといっている。もちろん混声合唱も使っている。聞けば海王星(神秘の神)よりも神秘的に聞こえる。だが時代が時代な為、曲自体が現代音楽的であり少々親しみづらい。
前の7曲が非常に分かりやすいのに対し、この冥王星だけはポピュラー音楽とは呼べないのではないか。クラシック音楽に精通した者じゃないと少々難しい音楽であることは確かか。

 惑星自体の大まかな初演は完成した1916年にと予定されていたが、その年は第1次世界大戦の真っ最中だったので、戦争終了まで延期を余儀なくされた。
全曲版の一般公開初演は1920年11月15日、ロンドンのクイーンズ・ホールでロンドン交響楽団とアルバート・コーツ指揮の演奏で行われた。
しかし1918年の9月に非公開で関係者のみに初演が行われている。当時の指揮は若干29歳による惑星演奏の第1人者、サー・エイドリアン・ボールト(1889-1983)であった。
抜粋版(金星と海王星を除く)の一般公開は1919年2月27日に同じくボールトの指揮で執り行われた。

これまでが作曲と初演に至るまでの経緯である

「現代の若者達と組曲<惑星>について」(ミニコラム)
 巷では平原綾香さんの歌った木星の歌版である「JUPITER」のお陰(?)でいっそう惑星の人気が高まった。クラシック音楽に精通していなかった現代の若者達がこぞって惑星のディスクを購入し、外資系ショップでは売上が増したのも確か。でも私はこういうことをしなければ若者たちが食いついてこないなんてちょっと寂しい。
平原さんにちょっと失礼なことかもしれないが、私は断然原曲の方が良い。彼女がこの超名曲に歌詞をつけて歌っている事が気に入らない。あと吹奏楽版も出ているが、断然オーケストラ版のほうが良い。吹奏楽だと決してあのダイナミクスは表現できない。管楽器のみでは無理がある。やはり弦楽器がないと。
特に火星冒頭のコル・レーニョ奏法(弓で弦を叩く)はオーケストラ版でしか味わうことが出来ないのだから。私はカヴァーとかしなくてもオーケストラを嫌う若者達(吹奏楽しか愛さない人や吹奏楽は聞けるけどオーケストラは聞けないという人も含む)にどんどん食いついてきてもらいたい。

 

 ということなので私がここで紹介している様々なディスクはほとんどがオーケストラ版である事を言っておきます。
全部同じ版とはいえ、演奏者によってそれぞれの工夫がなされ、それぞれの楽しみがあると言うことが伝われば嬉しいです。

 


組曲「惑星」作品32 聞き比べコーナー

(一応、録音の古い順に紹介していきます。)

管弦楽:ロンドン交響楽団 指揮:アルバート・コーツ
 この演奏は非常に貴重である。何とブックレットによれば初演の録音であると言うことらしい。1920年代の録音なんてSPなんだろうから音質は最悪だ。ノイズの方が目立つ。しかしこれがまた良い味でもある。演奏自体はかつて無い速さ。超速である。火星とかありえない速さ。冒頭から最後までずっと早い(時間:5:50)。指揮者にオケが追いついて行ってない。他の楽曲はいたって普通なのにどうして?全くすごい演奏だ。はなからこの速さじゃ後世の人間が困るじゃないか。というようなすごい演奏です。このディスクは愛知県内にある外資系ショップで中学生の時に購入したもの。今は売っているか分からないけど、良い買い物をしたと思っています。惑星を知るうえでの貴重な資料ですし。
★★★

 

管弦楽:ロンドン交響楽団 指揮:グスターヴ・ホルスト
 これまた貴重な音源である。何とホルストの指揮による自作自演のディスク。作曲者の解釈がもろに分かってしまう演奏。↑のコーツ版に近い早さだが、落ち着き度はこちらの方がはるかに上である。しかし本人が解釈する木星というのはこんなにも速いのかね??(時間:6:55)火星並の速さじゃないか。弦楽器とか良く追いついてるなぁ。それだけでもすごいのに。この頃からロンドン交響楽団は上手い事が分かる演奏でもありました。この音源はたまに見かけますので、購入されることをお勧めします。
★★★

 

管弦楽:BBC交響楽団 指揮:サー・エイドリアン・ボールト
 惑星の第1人者と言えばこのイギリスの巨匠、サー・エイドリアン・ボールトだろう。そのボールトは生涯に5回惑星を録音しているが、これはその記念すべき第1回目の録音。オケはプロムスで有名なBBC放送局専属のBBC交響楽団。1945年ごろの録音。演奏は非常に安定している。というか非常に上手い。このころにこんな演奏が出来たのはさすがボールト一人だけだろう。火星の何とも言えない安定感。テンポキープとかすごく良い。若い頃のボールトはテンポが割かし速めだった。これはオススメ。一家に一枚!
★★★★★

 

管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団 指揮:サー・エイドリアン・ボールト
 ボールトが1959年にウィーンで録音したディスク。帝王カラヤンがウィーン・フィルで録音する3年程前にボールトはこの地でそのオケと録音済みだった。このテンポキープと巧みなコントロールはボールト流。オケの技術が乏しい点だけを除けばこれはボールトがイギリス国内を飛び出していって、ヨーロッパで録音した貴重な音源と言える。それにカラヤンみたいに派手に鳴らせばいいっていう演奏ではなくて、しっとりした表現方ははるかにボールトの方が上である。同じオケでもあっさり感が味わえて尚且つ、惑星の良き理解者の演奏を私は勧めたい。
★★★★

 

管弦楽:ロス・アンジェルス・フィルハーモニック 指揮:レオポルド・ストコフスキー
 変わり者指揮者、ストコフスキーの名演奏である。惑星を初めてアメリカのオケで打ち鳴らした演奏。この当時から金管楽器は冴えていた。帝王カラヤンが惑星を世界的名曲にする前にストコフスキーは録音していたのにカラヤンに負けてしまった。しかしストコフスキーの功績は大きいと思う。あとこの曲を色々いじった演奏でもあるので変なアレンジが楽しめるお得な一枚でもある。これはかなりの歴史的名盤。
★★★1/2

 

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
 これは誰もが知っているカラヤンの記念碑的なディスク。カラヤンが惑星を世界に広めることとなった演奏。カラヤンの演奏だったら安心できる、カラヤンの演奏なら上手いから・・・などといった考えの人が世界には数多くいたので、惑星は瞬く間に有名曲となった。このディスクが出てから世界中の指揮者が惑星を録音しまくるようになった。で、演奏はと言うと、さすがカラヤン!と言いたい所だがオケが名門ウィーン・フィルであると言うことを期待しすぎるとショックを受けるような演奏。当時のカラヤンとしてはオケコントロールがなっていない。派手に鳴らして未消化の部分を上手くかき消している。火星の後半リズム(トゥッティの部分)が打楽器系(3連符で叩いている)とその他の連中の伴奏がかみ合っていないのは意図的なものなのか団員のミスなのか・・・。不思議な点が多々ある。私はカラヤン・ファンには申し訳ないが、やはり↑のボールト版をオススメしたい。
★★★

 

管弦楽:BBC交響楽団 指揮:サー・マルコム・サージェント
 惑星が18番だと言うイギリスの指揮者、サージェントの晩年ライヴからの録音。怒涛の速さの水星は聞く価値アリ。惑星の録音史上一番速いと思われる。他の6曲も全体的に速すぎる。ライヴでこのレベルの音作りができるのはサージェントただ一人では?音もなかなかクリアで臨場感が溢れている。
★★★★1/2

 

管弦楽:ボストン交響楽団 指揮:ウィリアム・スタインバーグ
 私が一番好きな演奏がこれ。スタインバーグの活躍はそれほどのものでもなかったが、この惑星はその活動の中でも飛び切り一番のもの。こんなにキレのある惑星を今まで聴いたことが無かった。70年代の初頭に録音されたものだが、全く古さを感じさせない素晴らしい演奏。特に火星でその物凄さを知る。この火星はすごくカッコイイ。速さも作曲者の物にとても近い。ミスは目立っても全く許せてしまう。他の曲も実に歓声豊か。木星は遅い演奏だが誠実な表現をしているし、土星の解釈も心地よいもの。今の演奏家に真似できないすごさがここにある。最近のディスクでこれを越える演奏は未だに無い。
★★★★★

 

管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック 指揮:レナード・バーンスタイン
 バーンスタインの惑星はカラヤン版よりそれほど経っていないのに、物凄い完成度を誇っている。しかしアメリカのオケ、鳴りに鳴り捲る。火星を気持ちよい速さで演奏しておきながら、木星は極端遅い。このギャップは少々辛いところか。土星もかなり遅め。でも土星はこれくらいの遅さが心に響く。天下のバーンスタインだが惑星の味付けは至って普通だった。
★★★

 

管弦楽:ロス・アンジェルス・フィルハーモニック 指揮:ズビン・メータ
 レコード・ディスク大賞を取ったつわものの録音。メータが録音した惑星の中ではこれに勝るものは無い。分厚い低音が凄い。テューバが特に。テンポもやや速めの火星や木星はメータの力量が発揮されたもの。録音は文無しに良い。ストコフスキーと同じオケだが数年経っている所為か、格段に上手くなっている。インド人指揮者メータの恐るべし力である。
★★★1/2

 

管弦楽:セントルイス交響楽団 指揮:ワルター・ジュスキント
 ジュスキントはコアなクラシック・ファンでなければ分からないような指揮者である。当時セントルイスで指揮活動を行っていた真っ盛りの時期の録音。セントルイス交響楽団といえばスラットキンとのコンビが有名だが、これはスラットキンが就任する前の演奏。ややあっさり目である。同じアメリカオケでもこれは控えめな部類に入る。しかしこれが逆に良い。鳴らしすぎ惑星を聞いて疲れめの耳にぴったりな演奏だからだ。派手さを求めない惑星好きには持ってこいの演奏であろう。
★★1/2

 

管弦楽:ロンドン交響楽団 指揮:アンドレ・プレヴィン
 いまや巨匠となった作曲家兼指揮者のプレヴィンが当時音楽監督を務めていたロンドン交響楽団と満を持して録音した惑星。はるか昔にコーツの指揮で惑星を演奏していた名門オケの登場である。やはり上手い。プレヴィンはこのオケの力を最大限に引き出す一歩手前で演奏しているように見える。この数年後に同じくイギリスのロイヤル・フィルと再録音をしているが、断然ロンドン響のほうが良い。さすが映画音楽の仕事もやってきたプレヴィンが映画音楽っぽいこの惑星を実に上手く表現している。
★★★1/2

 

管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団 指揮:ユージン・オーマンディ
 フィラデルフィア・サウンドを作り上げたとして世界の巨匠となったオーマンディの惑星。やはり巨匠の腕にかかればこの手の曲は楽勝か!と思いきや、やや荒い演奏である。ティンパニの音がちょっと硬すぎである。そしてうるさ過ぎでもある。しかしこのうるささが疲れた身体に元気を与えてくれそうな気がする。
★★★

 

管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 指揮:サー・ネヴィル・マリナー
 オランダのオケとイギリスの指揮者による特殊な惑星。名門オケの音はやはり違う。マリナーは全体的に遅いテンポでじっくり味わい深いものにしている。今まで速い惑星ばかりを耳にしてきたファンがここで初めて遅い惑星を目の当たりにしたのであるからさぞびっくりしたであろう。しかしこのマリナー版をきっかけに遅い惑星が世に出回りまくるのである。これまで遅い演奏はいくつかあったがそれらが出た当時はそれほど有名ではなかったから。マリナー版はこういうきっかけを作っただけではなく、演奏自体もとても素晴らしいので一度聞いてみてください。
★★★★

 

管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:サー・エイドリアン・ボールト
 巨匠ボールトの最後の録音。もはやこれを単なる演奏とは言ってはいけない。芸術作品の域だ。ボールトの円熟した指揮ぶりが伺える見事な演奏だ。手兵ロンドン・フィルをめいいっぱい使っている。まず弦楽器が非常に美しい。木星で聞かせるアンサンブルを超える演奏は他には無い。円熟したボールトは遅いテンポで今までの集大成を見せ付けているかのような感じを受ける。7曲全部が感動作品だ。これは惑星を知り尽くした巨匠が我々の為に残した最後の贈り物である。
★★★★★

 

管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
 ボールトと同じ時期に同じオケで録音されたまたもや巨匠のショルティ初の惑星で何故手兵のシカゴ響で録音しなかったのかとも言われた話題盤。しかしボールトと同じオケなのにここまで違うのかと思う演奏でもある。ボールトがじっくり系なのに対しショルティがあっさり系なのはいかがなものか。やっぱりボールト盤の方が際立ってしまってショルティ版の存在は薄れてしまう。だがボールトは遅くショルティは速い。この違いを同じオケの同時期の演奏として別の楽しみ方もあるにはあるが。ショルティはボールトには勝てなかった。
★★★

 

管弦楽:ボストン交響楽団 指揮:小澤征爾
 スタインバーグと同じオケで70年代最後に小澤によって録音された。やはり小澤も凄かった。何と言ってもスコアを全暗譜してからのオケコントロールは見事の一言。火星のリズムなどはやや機械的でもあるが機械に聞こえるようなコントロールされた演奏を生み出せる小澤は凄い。金星のソロ・ホルンも華麗になっているし、木星は落ち着いたテンポで進んでいく。やや遅めの海王星も良い味を出している。小澤がウィーン・フィルで惑星を再録音してくれないかと思うこのごろである。
★★★★1/2

 

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団 指揮:サー・サイモン・ラトル
 2002年、ベルリン・フィルの音楽監督に就任したラトルが若き日に録音したもの。しかもこのディスクにより日本デビューを飾った。当時20代のラトルがフィルハーモニア管を纏め上げ、より華麗に音を紡ぎ出している。ラトルはパーカッショニストなのでこの演奏では効果的に打楽器を使っている。楽譜には無い試みも数多くしている。この頃からラトルの才能が手に取るように分かる録音である。
★★★1/2

 

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンがウィーン・フィルと録音してから約20年が経った後にベルリン・フィルと録音されたもの。引き締まった弦楽器と管楽器の音の大洪水はいかにもベルリン・フィルって感じであるが、曲全部が機械的にしか聞こえず感動は無い。機械的といっても小澤征爾のようなやり方ではなく、単なる打ち込み音にしか聞こえないといった感じだ。面白みが全く無く、見本のような演奏にも値しない。見本はボールトだけで良い。しかもトランペットがうるさ過ぎて肝心のホルンが聞こえない編集の雑さが目立ってしまったディスクでもある。このCDは惑星入門版には良いが、何度も聞きたくは無い。カラヤンの演奏はウィーン・フィルだけで良かった。
★★

 

管弦楽:フランス国立管弦楽団 指揮:ロリン・マゼール
 フランスのオケによる初めての惑星。指揮者はマゼールだがオケがフランスということなのでさほど期待はしていなかったが、意外と良かった。木管楽器は良い音色を聞かせてくれるものの、金管楽器はいたるところでミスる。そこが逆に面白くてよい。木星に出てこないはずのスネアドラムが出てきたりとストコフスキー並のアレンジが施してあるところにも注目したい。こういう演奏もたまには良い。フランスの惑星も悪くは無い。出来ればパリ管弦楽団のも聞いてみたい。
★★★1/2

 

管弦楽:トロント交響楽団 指揮:アンドリュー・デイヴィス
 イギリスのプロムスでおなじみの指揮者、アンドリュー・デイヴィスがカナダのトロント響を指揮し、録音したディスク。実におとなし目で何か頼りなさが目立つ。デイヴィスは後にBBC交響楽団と再録音したものの方が迫力があってよかった。この演奏はいただけない。オケももっともっと鳴ってよかったと思う。鳴りすぎは良くないんだけど、鳴らなすぎも良くない。
★1/2

 

管弦楽:モントリオール交響楽団 指揮:シャルル・デュトワ
 円熟したデュトワの惑星。オケはモントリオール響だが相変わらず弦楽器の弱さが目立つ。しかしそこは管楽器の上手いフォローが伺える。さすがにデュトワの手にかかればこの楽曲も軽い音楽に聞こえる。ショルティよりも軽い。火星は幾分爆発しているが、木星ではその迫力が半分になってしまっているし、テンポも遅い。軽い感じのままテンポも遅いのは少々辛い。しかしその反面、金星や土星などで取っている遅いテンポは全く気にならない。このデュトワ版で聞くべきところはやはり土星だろう。土星の解釈は見事。本当に木星は軽すぎた。
★★★1/2

 

管弦楽:シカゴ交響楽団 指揮:ジェイムズ・レヴァイン
 世界中が期待していたシカゴ響の惑星。しかも指揮はレヴァインである。このオケと惑星の相性はぴったりらしく、レヴァインの指揮にも完璧についていっている。特に金管楽器は凄いの一言。木星で聞かせるホルン軍団は凄すぎる。レヴァインもまとめ方が上手い。火星は爆演もいいところ。土星は案外鳴りすぎるかと思いきや、やや抑え目な雰囲気。天王星はぶっちぎり。ラストは金管は姿を消し、やさしげな木管楽器を聞くことが出来る。今まで出ているアメリカオケの中では一番であろう。落ち着き感は得られないけど・・・。
★★★★★

 

管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック 指揮:ズビン・メータ
 メータ第2回目の録音。L.A.での演奏を聞いてからこれを聞くと非常にがっかりする。あの頃のダイナミック差が全く無いのだ。しかもオルガンはなりすぎでうるさいし。メータが大人になって控えめになったのかも知れないが、私は断然若いときのほうが好きだ。この演奏には情熱が無い・・・。

 

管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ジェイムズ・ジャッド
 現在、ニュージーランド交響楽団やフロリダ・フィルなどで活躍の場を広げているジャッドの惑星。来日も何度もしている。そんな彼がお得意の惑星を録音した。以外にもこれが初録音。演奏はというと案外あっさり系。比較的テンポは遅めでじっくり料理するタイプ。軽いんだけど憎めない系。若さ故に経験が乏しいのが目立つがこれから十分期待できる指揮者である。余談だがジャッドの顔は俳優クラスの顔である。
★★★1/2

 

管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ヴァーノン・ハンドリー
 イギリス国内をメインで活躍しているハンドリーの惑星。ジャッドと同じオケだがこちらは重い系。指揮者が変わると物凄い変化が見られるオケとして有名なロイヤル・フィル。それをとくと味わえるだろう。テンポは平均並。どこかに特徴があるかと言えば特になし。でもキレの良い演奏なので聞きやすいことは確か。カップリング曲は同じくホルストのセントポール組曲第2番だった。
★★★

 

管弦楽:ジョージアン・フェスティヴァル管弦楽団 指揮:ジャーニ・マルドジャーニ
 よく分からないオケと得体の知れない指揮者による惑星。技術はどうかと思いきや、これがなかなか鳴らしてて良い。イマイチ、オルガンの音が電子的で腹が立つ。そして音が反響しすぎている。木星とかやたらミスが目立つ。ライヴ版なのかもしれない。良くも無く悪くも無い演奏であった。
★★

 

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団 指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー
 ホルストと親交の深かったバルフォア・ガーディナーの子孫であるエリオットの指揮による惑星。これは上手い。木星が特に素晴らしい。非常に速く、とちる事の無い演奏だ。逆に火星は非常に遅いが、じっくり料理していて安心が得られる。ガーディナーのことだから次回は古楽器オケで録音してもらいたい。カップリングはグレインジャーの大組曲「戦士達」。これもガーディナーの演奏で好きになり別の演奏も買いあさった。
★★★★1/2

 

管弦楽:NHK交響楽団 指揮:デイヴィッド・アサートン
 1996年のライヴ録音である。イギリスの指揮者アサートンによる惑星であるが、私が今まで聞いたN響の惑星の中で一番良かった。火星がスタインバーグ並に速く、木星もかなりの速いテンポである。しかし金星や土星は遅いテンポキープをしており、本場イギリスの識者に見られる特徴がここでも聞くことが出来た。結構ミスは見られるがライヴのための許すことにしよう。火星の速さで何もかも許せる。ティンパニを含め打楽器が爆発している。
★★★★1/2

 

管弦楽:NHK交響楽団 指揮:シャルル・デュトワ
 デュトワがN響定期で演奏したもの。モントリオール響の時より若干だがテンポは速め。やや重い演奏になった。こちらの録音の方が良い。アサートンのときよりN響のミスは目立たなくなったし。デュトワの指示が細部まで行き届いているのだろう。2005年の定期でまた惑星をやるようだが、指揮者はイケメンのジャッドである。
★★★1/2

 

管弦楽:ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団 指揮:デイヴィッド・ロイド=ジョーンズ
 この演奏は何と冥王星付である。ナクソス・レーベルでモリモリ録音活動をしているロイド=ジョーンズが18番であるホルストをキレの良いオケで録音してくれた。のっけから爆演を聞かせてくれる。レヴァイン版に勝るかもしれない名盤となった。冥王星までついて1000円なんて超お買い得だし。木星なんて涙モノの演奏じゃないか。このディスクは冥王星付き惑星をを知る上での貴重な資料になるし、演奏もズバ抜けてよいので、皆さん買うように!
★★★★★