マーティン・エレビーは1957年10月22日、イングランドの北中部のノッティンガムシャー州ワ−クソプに生まれました。最初にトランペットを、続いてピアノを学び、ロンドン音楽カレッジを卒業後、同じくロンドンの王立音楽カレッジ(RCM)でジョセフ・ホロヴィッツに作曲を、W.S.ロイド=ウェッバーに対位法を師事。さらに、作曲家ウィルフレッド・ヨーゼフにもプライベートに学びました。
 作品は、管弦楽・室内楽・声楽・器楽など幅広いジャンルにありますが、師のホロヴィッツの影響もあってか、近年吹奏楽とブラス・バンドの両ジャンルに作品を多く書いています。1994〜95年、スイスのブラス・バンド「ブラス・バンド・ベルナーオーバーラント」のコンポーザー・イン・レジデンス(専属作曲家)、1995〜96年、イングランド芸術カウンシルのスポンサードによって「イギリス青少年ブラス・バンド」のコンポーザー・イン・レジデンス、1997年からはイングランドの名門ブラス・バンド「フェアリー・バンド」のコンポーザー・イン・レジデンスを歴任する一方、母校ロンドン音楽カレッジの作曲および現代音楽の主任教授を努め、1997年からは「ロイヤル・エア・フォ−ス音楽学校」の教務責任のある客員教授も担当しています。


<トリスタン・エンカウンターズ> ”Tristan Encounters”

演奏:ウィリアム・フェアリー・バンド
指揮:ジェイムズ・ガーレイ
 「トリスタン・エンカウンターズ」は、リヒャルト・ワーグナーの名作「トリスタンとイゾルデ」をモチーフにしたブラス・バンド作品で、いたるところの有名バンドが演奏しまくっている超有名曲です。ものすごくカッコいいフレーズがハイテンポの中、駆け巡ります。ブラスとパーカッションの大暴れする曲で、この手の音楽が好きな人は完全にノックアウトでしょう。約18分という大曲ですが、その長さを全く感じさせず、聞き手を曲の中に引きずり込みます。本当に見事な曲想で書かれた素晴らしい作品です。吹奏楽版も出ています。

 

<エヴォケーションズ> ”Evocations”

演奏:ロイヤル・エア・フォース・セントラル・バンド
指揮:ロブ・ウィッフィン空軍中佐
 「エヴォケーションズ」はスペインを題材に作曲した4曲からなる組曲です。いかにもスペイン風という音楽ではなく、エレビーらしく上品な表現の中にスペイン音楽のエッセンスを織り込んだ洗練された作品に仕上げられています。シュールレアリズムの巨匠ホアン・ミロの絵画による「アルルカンの謝肉祭」、ミゲル・デ・セルヴァンテスの有名な小説から着想を得た「ドン・キホーテの死」、フェデリコ・ガルシア・ロルカの詩に基づく「夢」、ピサロ将軍によるスペインのペルー征服を描いたピーター・シェイファーの「太陽の国の征服」のタイトルが付けられた4曲で構成されています。冒頭からスピード感あるエレビーの作風がふんだんに流れ始めます。 第2楽章と第3楽章は落ち着いた楽章。そして第4楽章は、パーカッションと金管楽器が大活躍し、コーダでは演奏者の荒れ狂う掛け声(?)が登場し、大音量のまま曲は終わります。なんとも熱いスペイン音楽なんでしょう!