1980年代のロックバンド「オインゴ・ボインゴ」のヴォーカルとして活躍していたダニー・エルフマンは、昔から映画を見ることが大好きでした。彼の兄、リチャード・エルフマンは映画監督。 ダニーは兄へ音楽を提供したのきっかけに映画音楽家の道を歩むこととなります。 そして1980年中盤、ダニーがこれからの人生の最大の友と出会います。 映画監督:ティム・バートンです。ダニーは彼と知り合って以降、彼の作品のほとんどに音楽を提供します。 一時は喧嘩して縁を切ったなどと言われましたが、すぐに復縁し、今でもバートン付きっきりの作曲家として活躍しています。 私を映画音楽の魅力に引き込ませてくれたのは他ならぬこのダニー・エルフマンです。 |
私が自信を持ってお勧めする作品の数々です。評価は「★」の数が多いほど高いです。5つが最高。
バットマン(1989) ★★★★★ |
演奏:シンフォニア・オブ・ロンドン 指揮:シャーリー・ウォーカー |
ダニー・エルフマンの人気が高まったのはこの「バットマン」でしょう。そして監督のティム・バートンもこの映画で大ブレイクしました。ダニーにバットマンのテーマを書かせるとこんなカッコ良い音楽になりました。100人編成の大オーケストラに混声合唱を含んだスコアを作り上げました。当初リリースは予定されていなかったこのスコアアルバム。曲を聴いたファンが配給元のワーナー・ブラザーズに懇願したところ、急遽リリースされたのは有名な話です。オーケストレーション&指揮を担当したシャーリー・ウォーカー(女性)の力もあって、この見事な楽曲は完成しました。聞いて損はないです!私はこのアルバムによって映画音楽というものにとりつかれたのでした。バットマンのテーマはもうかなり有名で、吹奏楽のニュー・サウンズ・イン・ブラスでアレンジされたり、シンシナティ・ポップスにより交響組曲がリリースされたりとその人気は今でも衰えていません。 |
バットマン・リターンズ(1992) ★★★★ |
演奏不明 |
前作の人気を引き継いで、ティム・バートンとダニー・エルフマンがタッグを組んだ作品。前作の有名なテーマがよりダークにアレンジされて、バットマンに戦いを挑む、キャットウーマンやペンギンのテーマ曲も作曲されました。今回もフルオーケストラと混声合唱を取り込んだ魅力的なアルバムに仕上がっています。11分にも及ぶ「最終決戦」は見事としか言い様がありません。 |
シザー・ハンズ(1990) ★★★★★ |
演奏:シンフォニア・オブ・ロンドン 指揮:シャーリー・ウォーカー |
ティム・バートンが創り上げたラブ・ファンタジー映画「シザー・ハンズ」。その音楽はバットマンとは違って優しくそして美しいメロディの数々によって構成されています。激しいアクション・スコアはあんまり無く、どっちかというとメロディアスな作品が多く、その随所でコーラスの美しさが一際目立っています。バットマンでオーケストレーションを担当した、シャーリー・ウォーカーも続投し、ダニーの音楽をより質の良いものとしています。 |
ビートルジュース(1988) ★★★★ |
演奏不明 |
ダニーがバットマンを作曲する前にティム・バートンと組んだ作品。死んだ夫婦(アレック・ボールドウィン&ジーナ・デイヴィス)を蘇らせる為に努力する少女(ウィノナ・ライダー)とは裏腹に、この生き返ろうとする夫婦を利用して自分も生き返ろうとする死者:ビートルジュース(マイケル・キートン。後のバットマン役)との戦いを描いたコメディー映画「ビートルジュース」。音楽はフルオーケストラではなく、バンド+オーケストラ形式でポップス調に書かれています。楽しい音楽目白押しです。テーマ曲はダークながらもコメディチックな音楽。ダニーのバンド経験が生かされた作品です。 |
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ダークマン(1990) ★★★★★ |
演奏:シンフォニア・オブ・ロンドン 指揮:シャーリー・ウォーカー |
「シザー・ハンズ」と同時期に書かれたのがこの作品。監督は「死霊のはらわた」、「キャプテン・スーパー・マーケット」などカルトホラーを作ってきた巨匠サム・ライミ。この「ダークマン」は自分の婚約相手の上司に殺された科学者(リーアム・ニーソン)が自分を殺そうとした上司に復讐する映画。面白いですが、反面悲劇的な作品でもあります。音楽はタイトルどおりダークな音楽ばかりですが、メインテーマがバットマンによく似ています。収録されているアクション・スコアはダイナミックで燃えに燃えまくります。ブラスが凄い!映画を見たこと無い人は見るべし。ホラー要素も入っていますが、そんなに怖くないですよ。 |
スパイダーマン(2002) ★★★★★ |
演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団 指揮:ピート・アンソニー |
「ダークマン」でメガホンを取ったサム・ライミ監督によるアメコミが原作の映画。日本でもかなりヒットしました。ここでもメインテーマはバットマンに似ですが、バットマンとは違うところが伴奏に打ち込みのリズムを使用しているところです。ダニーは最近この手法をよく使うようになりました。何故かと言えば、アレンジを担当している「マーク・マン」という人はダニーと同じバンド「オインゴ・ボインゴ」でキーボードを担当しており、打ち込みも得意な人だったからです。でも全編、打ち込みに頼っているわけにはいかず、ダニー特有のオーケストラ・サウンドが見せてくれます。とにかく私はバットマンの次にこのアルバムをお勧めしたいです。聞いて損はまったく無しですぞ! |
チャーリーとチョコレート工場(2005) ★★★★★ |
演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団 指揮:リック・ウェントワース |
ティム・バートンのマニアックな世界炸裂の2005年度映画「チャーリーとチョコレート工場」。原作はロアルド・ダール。何でもこの本はイギリスの子供達が選ぶ童話ベスト3に入っているんだとか。凄い人気です。さて本作品は1970年代に一度映画化されており、その時の主役はコメディ俳優のジーン・ワイルダーでした。今回は今や人気絶頂の中にいるジョニー・デップ。彼はティム・バートン作品に登場するのはこれで4回目。ジョニー自身も「バートン作品に出演することを光栄に思う」と述べているようにバートンを尊敬しています。彼からオファーがあれば脚本も読まずにサインしてしまうほど。 さてとエルフマンの音楽ですが、なんとも「ビートルジュース」チックなサウンドで楽しい音楽になってます。ちょっぴりシザー・ハンズ+パワーアップしたビートルジュース+リズムはスパイダーマン=本作。こんな感じです。あいかわらず最近身につけ、多用しまくっている打ち込みリズムはメインテーマでフル稼働!劇中に登場する「ウンパ・ルンパ」の曲なんかはずいぶんと怪しげに書かれているし、ダニーが得意としているコーラスの登場の仕方も上手い。メインテーマがダークなのはこのお話がダークな所為もあるんでしょう。 毎回素晴らしいオーケストレーションを披露してくれているのはダニー・サウンドには欠かせない「オインゴ・ボインゴ」時代のメンバーであるスティーヴ・バーテック。そして最近のダニー作品のドコドコリズムに手を貸している問題の男、マーク・マン。後者の男はかつてのスパイダーマンでバットマンの音楽に打ち込みリズムを加えたようなド派手な音楽に仕立て上げた張本人。今回もメインテーマで聞かれる打ち込みはこの男によるもの。演奏は毎回お馴染みのハリウッド専属オケ。指揮は作曲家でもある、リック・ウェントワース。合唱団はメトロ・ヴォイセズ。そして今回人気を呼んでいるのはダニーが自作自演している5つのソングです。「オインゴ・ボインゴ」時代にヴォーカルをやっていただけあってさすが!歌を作るのも相変わらずうまいダニー。でも歌も良いけどやっぱりインストゥルメンタルな楽曲の方が惹かれます。久々に楽しめたアルバムでした。 |