ポール・クレストン(1906-1985)は、イタリア人の血を持ち、5歳の時、
父親に連れていってもらったシシリアの印象を大事にして育ったといいます。
音楽は小さな時に中古のピアノを無理して買ってもらったのがそもそもの始まりでした。
しかし本格的に作曲家を志したのは26歳の時。すでに結婚して5年経っていたのです。
小さい頃からいろんな本を読み漁るのが好きだったというクレストンですが、
作曲に関しても徹底的に本から学びました。当時入手できる作曲法、和声や対位法、
音楽理論など、ニューヨークの図書館にあるものを片っ端から学習そうです。
その他音楽の講演会やコンサートにも積極的に出かけ、マンハッタンの地の利を活かした独学をしました。
クレストンの有名な作品はやはり交響曲第2番と第3番でしょう。彼は吹奏楽曲も幾つか書いており、
吹奏楽の世界で彼の名前を知った人は結構いるのではないでしょうか?
ここで紹介するのはクレストンの手がけた交響曲・管弦楽曲をいくつか・・・。


交響曲第2番作品35
Symphony No.2 Op.35

クレストンの交響曲の中でかなり地味ですが有名な交響曲第2番。2楽章形式のシンプルな
交響曲ですが、第1楽章の「序章と歌」は静かながらもロマンティックな楽章で、
第2楽章の「間奏曲と踊り」はタイトルが示すとおり、前半は落ち着いた間奏曲、
後半は逆に落ち着きを無くした激しい舞曲と化しています。
人々はこの交響曲をアメリカが生んだ偉大なる交響曲の一つと言う人もいるくらい、
素晴らしい出来の交響曲であると思います。

 

交響曲第3番作品48 「3つの神秘」
Symphony No.3 Op.48 "Three Mysteries"

クレストンが1950年に作曲した第3番目の交響曲。キリストという深刻な題材をモチーフにした
本格的な交響曲。翌年、ユージン・オーマンディの指揮、フィラデルフィア管弦楽団により
初演された曲でもあります。
第1楽章はキリストの降誕、第2楽章はキリストの十字架の死、第3楽章はキリストの復活
という本当に深刻さが伝わってくるような題名が各楽章に付けられています。
交響曲第2番ほどの激しさはないのですが、こちらの方がよりロマンティックさが増した
と思っても良いでしょう。第2楽章なんかはキリストの死について描かれているわけですから、
哀しみをテーマにした楽章になっています。第3楽章のキリストの復活については、
復活するキリストを称えるような煌びやかな楽章になっています。
こんな題名で曲を理解するのが難しいのでは?と思う人もいるかもしれませんが、
そんなことはなく、すごく分かりやすい曲ですので、安心して聞くことが出来るでしょう。

演奏:ウクライナ国立交響楽団 指揮:テオドレ・クチャル
 有名な交響曲第2番とキリストを題材にした交響曲第3番を収録したアルバムです。演奏はウクライナを代表するオーケストラ、ウクライナ国立交響楽団とそこの常任指揮者であるテオドレ・クチャルの最高コンビ。ここのオーケストラはアメリカの作品を演奏しても抜群な上手さを持っているので、このクレストン作品集も大当たり!第2番なんかは燃えるような名演と言ってもいいでしょう。とにかく熱い!第2楽章の白熱の舞曲も素晴らしい。第3番は第2番とうって変わって、丁寧に纏め上げており、本当に同じ演奏家なのかと思う節もあります。初めクレストンを聞くという方にお勧めです。なんていったってナクソスの超豪華盤なのですから!