アンドレス・ヴァレロ・カステルスは1973年、スペインのバレンシア生まれ。スペリオル芸術学院で作曲を学び、幾つかの賞を受賞しました。作曲は、エドアルド・シフレ、マニュエル・ガルダフ、フランシスコ・タマリットらに師事しました。現在はバレンシア専門音楽院で作曲や和声、アナリーゼを教えています。管弦楽や吹奏楽、室内楽などの作曲作品やいくつかの編曲作品を発表しており、その作品は数々の作曲賞を受賞しています。 まだまだ若い、これから期待されるべき作曲家でしょう。


<カステルスの作品> ”Castells Works”

<交響曲第1番「バル・デ・ラ・ムルタ」(ムルタの谷)> ”Symphony No.1 La Vall de la Murta”

演奏:ブニョール・ラ・アルティスティカ交響吹奏楽団
指揮:ヘンリー・アダムス
 交響曲第1番「バル・デ・ラ・ムルタ」(ムルタの谷)は、アルシーラ音楽協会の委嘱で2002年のバレンシアの国際吹奏楽コンクールで自由曲として演奏するために作曲された作品です。アルシーラのサンタ・マリア・デ・ラ・ムルタ修道院の創設600周年にあたることから、修道院があるバル・デ・ラ・ムルタを訪れたときの印象やその歴史、美しい自然や情景を音楽で描きました。「山脈、火災」「修道院、1401年」「ムーアの海賊、石の橋」と題された3つの楽章からなる演奏時間27分のスケールの大きな交響曲となっています。

 

<ドレドレド> ”Dredred”

演奏:ブニョール・ラ・アルティスティカ交響吹奏楽団
指揮:ヘンリー・アダムス
 「ドレドレド」は1999年、バレンシアの国際吹奏楽コンクールの課題曲となった作品で、いかにもスペインらしいサウンドとなっています。視聴してみて、この曲の中盤に出てくる打楽器のリズムに乗ってフレーズが飛び出すところがありますが、そこがなんとも、ショスタコーヴィチ作曲の交響曲第7番「レニングラード」の第1楽章にそっくりって思いました。なんとなくメロディも似ている・・。でも全体を通して、まだまだ若くて経験も浅いのに、良くここまで書けるなぁと感じました。立派!立派!

 

<ポリフェーモ> ”Polifemo”

演奏:ブニョール・ラ・アルティスティカ交響吹奏楽団
指揮:ヘンリー・アダムス
 「ポリフェーモ」は、2001年のバレンシア国際吹奏楽コンクールの課題曲として委嘱で作曲されました。スペイン語でポリフェーモと意味する「ポリュペモス」は、ギリシャ神話に登場する一つ目の巨人「キュクロプス」の一人の事を指します。海神ポセイドンとニンフのトオーサの息子で、海の精ネレイデスの一人であるガラティアに想いを寄せていました。しかしガラティアはそれを拒絶し、ポリュペモスは嫉妬のあまりにガラティアの恋人であった羊飼いのアキスに岩を投げつけて殺してしまいました。ガラティアとアキスのこの悲劇の物語は16世紀〜17世紀のイタリアやスペインの多くの詩人がその題材として取り上げましたが、カステルスはそれを音楽で描きました。演奏時間は約15分で、ドラマチックな展開と叙情的な旋律が非常に印象的な作品になっています。
 このポリフェーモはすでに、東海大学付属翔洋高等学校吹奏楽部が2002年全日本吹奏楽コンクールで自由曲として演奏していました。このオフィシャルが出る前に聞いた方もいるんですね。