作曲者(映画の特徴)について |
1995年、バットマンシリーズは第3作を迎えることになりました。配給元のワーナーブラザースが下した答えは、「スタッフ&キャストの一新」でした。1と2の監督を手がけたティム・バートンは監督業を降り、製作にまわりました。音楽も同様に手がけていた、ダニー・エルフマンも降板を余儀なくされました。そしてワーナーが選んだニュー・バットマンの監督は巨匠クラスのジョエル・シュマッカー。そして音楽はクラシック音楽畑出身の新鋭、「エリオット・ゴールデンサール」。監督のシュマッカーはゴールデンサールを起用したことについて「新しいバットマンの構想にエルフマンのテーマは必要なくなった。この作品では私が最も信用できる彼に任せたい。」と述べています。エルフマンは用済みってことですかい?しかし確かに映画を見た後、納得しました。「確かにこの映画にはエルフマンのテーマは合わないな」と・・・。今までの作品がダークなものだったことをシュマッカーは大変気に掛けていました。それを踏まえてシュマッカーが創造したニュー・バットマンはダーク性をブチ破ったスーパー・エンタテインメント・ムービーでした。映像も音楽もハデハデ。役者もハデハデで超ゴージャス。今までのバットマンファンの期待を大きく覆したのです。 ゴールデンサールは今や売れっ子の作曲家になりましたが、当時はまだ作品数も少なく無名に近い状態でした。サスペンスフルな楽曲を提供した「エイリアン3」は映画自体がコケた為、音楽は忘却のかなたへ・・・。そんな状態の中、世界中のファンが待っていたバットマン・フォーエヴァーの音楽担当にはファン一同、困惑しました。「彼でホントに大丈夫かな」と。 |
作品(楽曲)の考察 |
@.テーマも一新!完全に変わったメインテーマ。 |
僕はこのテーマを初めて聞いたとき、「ゴールデンサールは明らかにエルフマンのテーマを参考にしているな。」と思いました。テーマの作り方が非常に似ていたから。冒頭からいきなり聞くことが出来るニュー・テーマをうるさ過ぎるほどのパーカッションと唸るホルンの高音が書き消します。この辺からエルフマンとは違った作風を聞くことになります。ほとんどテーマ性のない音楽。バットマンのテーマは聞こえるもののヴァリエーションはないです。しかも短すぎる楽曲なのでこれといった深みはありません。クラシック音楽畑で研鑽を積んできた人にもかかわらず、ジャズテイストな作品やとにかくやたら派手なバットマンを描いてくれます。これもシュマッカー監督の意向なんでしょうか。 ★ハデハデなニュー・メインテーマ 試聴 |
A.聞かせる作品よりも本当のBGM。 |
ゴールデンサールの楽曲はエルフマンみたく、アルバムを単体で聞いてそれほどの感動を得られるものでもありません。ほぼ映像に合わせて作られているので、映像が変わると音楽も変わるといった感じです。これぞ「本当のBGM」にしか過ぎません。いたるところにカッコいいテーマがあることはあるのですが、「テーマを提示したら終わりです」といった感じなので、長くは楽しめないし、心にもあまり残らないのが現状です。そんな状況下の中で僕の心の中に残った楽曲は「メインテーマ」とクライマックスに流れる「バットマンよ永遠に」という表題の作品です。後者の楽曲はワーグナーの作品のように聞こえます。この辺はクラシック畑出身の経験が生かされたのかと思います。しかし、ジム・キャリー扮するエドワード・ニグマ(上の写真で赤髪のアホ面、尚且つ一人だけういてる)のテーマ曲があるのですが、これは最悪な音楽です。いろんなテーマが出すぎて何がなんだかチンプンカンプン。どこかのガキが適当に弾いてるようなシンセサイザーや不気味なんだけど何が言いたいのか分からない独唱。まさしく現代音楽!もっと時間を掛けてもよいから、ましな音楽を書いてほしかったと切実に願う次第です。 |
B.究極のハデハデ・オーケストレーション。 |
ゴールデンサールは自らオーケストレーションを行っています。この辺はさすがというところでしょう。しかしウルサイ!うるささにも限度があるってもんです。作曲者として色々なことをやってみたいのはわかりますが、これは・・・。オーケストラに何でもかんでもぶち込みすぎ。エレキベース、シンセサイザー、金属音、独唱など。何でもかんでも入れるからこんなにハデハデな作品になっちゃうのです。そしてメロディックでもないし。オケはロンドンの歌劇場管弦楽団を使っているようですが、いつもオペラばかりやっているオケにこんな試みをしていいのでしょうか。聞くたび楽譜に「何でも良いから派手に鳴らせ!」と書いてあるかのよう。ホルンなんて高音を吹きすぎて途中で息が続かなくなりブレスしているのがばれる有様。レコーディングしたものなのに・・・。いくらエルフマンの影響を受けているとはいえ、これはないだろう・・・。僕は真剣にシュマッカー監督を恨みました。 |
C.総合 |
リニューアルされたバットマン。音楽も変わりました、というか変わり果てました。より深みの無くなる楽曲へと・・・。ゴールデンサールよ、監督の言うこと聞きすぎ。というわけで第2期バットマンシリーズは最悪の幕開けとなりました(僕の中では)。でもねまだこのフォーエヴァーは良い方なんですよ。これに続く作品に比べたら・・・。 |