ジョージ・アンタイルは、1900年に生まれ1959年に没したアメリカの作曲家です。
1920年代、「音楽の不良少年」を自称し、彼の代表作《バレエ・メカニック》は、
自動ピアノ10台に、飛行機のエンジン、打楽器という奇抜な編成のために書かれました。
初演が行われたパリでは、もうそれはスキャンダラスで、まさに「不良少年」の面目躍如たるところが
あったということです。しかし、1940年代になると、この「不良少年」、「良い大人」になってしまい
、ハリウッド映画のために音楽を書き、生計を立てました。
彼の作品は現代音楽に近い作風ですから、オーケストラの編成も大編成に近いのです。
しかしアメリカ人なのに雰囲気はロシア風、例えば交響曲なんかはショスタコーヴィチ風に聞こえます。
そんな彼の代表作を紹介していきたいと思います。


交響曲第4番「1942年」、交響曲第6番「ドラクロワによる」、序曲「マッコンキーズ・フェリー」
演奏:ウクライナ国立交響楽団 指揮:テオドレ・クチャル
 交響曲第4番は、どうやらオペラ「アトランティック」のニューヨーク上演で気落ちしていたアンタイルが起死回生を狙って書いた作品のようであり、事実後期作品として、最初に評価されたものであるようです。1942年という年代がサブ・タイトルになっていますが、それが表わすように、第二次世界大戦中の殺伐とした出来事が、作品のインスピレーションとなっています。アンタイルは当時、戦争関連のライターとしても腕をふるっていて、日々世界で起こる悲劇に対して、鋭敏な感覚を持っていたのでした。このCDは私がアンタイル入門の為に買いました。聞いてみると演奏は上手いし、曲もいいし、文句なしの1枚でした。曲の特徴はとにかく金楽器がバリバリ鳴ること、打楽器が猛烈に鳴ること、そんな印象をもった交響曲でした。あんまりメロディアスではないけれど・・・。交響曲第6番はすごすぎでした。カップリングの序曲も終始金管バリバリのサウンドです。演奏は私の大好きな無名作曲家を多く録音しているウクライナ国立交響楽団でとても満足のいく演奏です。とにかくオススメ!

交響曲第4番「1942年」、交響曲第5番、他
演奏:フランクフルト放送交響楽団 指揮:ヒュー・ウルフ
 かの有名なオーケストラ、フランクフルト放送交響楽団の熱い演奏です。交響曲第4番は上の演奏よりテンポは遅めなのですが、金管楽器がより燃えていて素晴らしいです。カップリングの交響曲第5番ははじめて聞きましたが、なんともこれが吹奏楽チック!カッコ良いのです。一度聞いてみてください。吹奏楽チックという意味が分かるでしょう。

バレエ・メカニック、弦楽の為のセレナード第1番、5つの楽器の為の交響曲、他
演奏:フィラデルフィア・ヴィルトゥオーソ室内管弦楽団 指揮:ダニエル・スポールティング
 冒頭でアンタイルについての説明書きの中に少し「バレエ・メカニック」の事を書きました。その説明の通りの曲で、訳が分かりません。とても奇妙な曲です。飛行機のエンジンもバッチリ聞こえます。簡単に考えれば打楽器アンサンブルの大編成版みたいな感じ。派手さにはしっかりと燃えます。演奏も上手いし。カップリングの弦楽セレナードも良く分かりません。現代の弦楽セレナードはこんな感じになるのかなって思えば普通に聞けます。ただチャイコフスキーの弦楽セレナードとはえらい違いですけどね。他にもバラエティに富んだ作品がいくつか収録されています。アンタイルのアルバムの中で一番意味不明な作品が入っていますが、その意味不明なところがアンタイルらしくていいと思いました。